伊坂幸太郎/魔王

魔王 伊坂 幸太郎 講談社 2005-10-20 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools

うーん、これはちょっと…。
魔王と聞いて誰もが思い出すのが音楽の時間に習ったシューベルトの歌曲。主人公はまさに『魔王』の坊やである。直喩としての魔王は犬養でお父さんは主人公の周囲の人達。暗喩としての魔王はファシズムに何の危機感も持たずにただただ雰囲気に流されていく日本人気質みたいなもの。
後半の「呼吸」では現実世界でも数年後には起こりうる憲法9条改正の国民投票を題材として取り上げている。そして主人公の周囲の人達に9条改正の是非を語らせる。賛成、反対、それぞれ出るのだが物語として結論は出ない。国民投票の前に物語りは終わってしまうからだ。但し流れとして9条は改正され自衛隊は自衛軍になる。そして1度目の改正で大騒ぎした国民やマスコミも2度目はそれほど是々非々もなく憲法は改正されていく。徴兵制、核武装、軍靴の音…。
だから憲法改正反対、どうしてもこう読み取れてしまう。
それに非武装宣言や自衛隊の志願制から徴兵制へという作中の護憲派の発言で萎えてしまった。
本当に怖いのは魔王より坊やなのかもしれない。

オススメ度：★★☆☆☆